論点への補足説明
「単純所持禁止」を制定した諸外国では冤罪被害者による自殺も起きているが、その点はどうするのか?
「単純所持規制」を導入した英国では「Operation Ore」、豪州では「Operation Auxin」という大規模な児童ポルノの摘発作戦が実施されましたが、「児童ポルノ」という性質上、例え無罪になっても社会的評価を著しく低下させられるため、作戦では容疑をかけられた時点で多くの自殺者が出ています。
- 豪州の単純所持一斉摘発で、僅か3日で数百名を逮捕し4名が自殺。
- リオ・デ・ジャネイロで連警が児童ポルノ取締法違反で家宅捜索中に容疑者少年が6階の自室から飛降り自殺。
- 英ではオペレーション・オレという単純所持一斉摘発で4000人を検挙32人が自殺。その大半は妻帯者であり、以前の一斉検挙では300人が自殺。
児童ポルノ・児童買春事件のえん罪はあるのか? 09:40
http://d.hatena.ne.jp/okumuraosaka/20080414#1208133656
単純所持罪の反対理由に「えん罪の危険」があるそうですが、現行法でもえん罪はあると思いますよ。
児童ポルノの陳列・提供(製造なし)については、被描写者が特定できないので見かけで判断している以上、児童にみえる非児童が混じっている危険性がわずかにありますから、それがえん罪。それと、芸術性による違法性阻却を主張すれば通りそうなのにあっさり認めた事案や法律上該当する構成要件がないのに近いところで処罰された事案。
法令適用間違っているのは数えきれません。ほんとは弁護人が指摘しないとだめなんですが、勉強不足でして。
児童買春については、真実、年齢認識がないのに「児童であると知っていた」という供述をして有罪となった事案、支配が進んでいて対償供与の約束なんてないのもありそうです。児童買春犯人は優しい人が多いので、がんばらないんです。
参考サイト
「単純所持禁止」は社会を疑心暗鬼の方向に向かわせるような制度だが、その点はどうするのか?
ネット上の著名なニュースサイト
「GIGAZINE」では、「単純所持規制」を導入した諸外国での弊害の例を頻繁に紹介しています。
上記のようなケースでも有罪になってしまう「単純所持規制」を導入し、それと「冤罪被害による自殺者が出ても摘発を優先させる姿勢の捜査機関」が組み合わさると、一般の国民から見ると社会を疑心暗鬼の方向に向かわせ、密告などが奨励される社会に近づいてしまうという指摘もされています。
「単純所持禁止」を導入した場合、問題になっている「おとり捜査」を一層推進してしまうのではないか?
30歳の女性が子供の頃に撮影したヌード写真をブログにアップした場合でも「子供の人権侵害」で処罰されるのはおかしいのではないか?
松浦大悟参議院議員インタビュー【第2回】国家の介入は「国民の自由を守るため」に
http://ameblo.jp/mangaronsoh/entry-10076351373.html
民主党の会議では「もし、30歳の女性が子供の頃に撮影したヌード写真をブログにアップした場合、児童ポルノとして処罰対象になるのか? 仮に、そうであれば一体誰の人権を侵害したことになるのか?」と質問しました。
これに対して、法務省は、「子供の人権を侵害したとして処罰の対象になる」と回答しました。そこで「成人の女性が、自己決定で公開したものが誰かを傷つけていることになるのか?」と聞いたところ「本人は傷ついているハズです」と答えるのです。
法務省の上記の見解への回答としては、下記の奥村弁護士の見解が説得力をもっています。
「児童ポルノを定義できない法務省」って議員から突っ込むのは法務省に気の毒ですよ。 - 奥村徹弁護士の見解
http://d.hatena.ne.jp/okumuraosaka/20080303/1204526863
議員立法なので、まず議員が解釈示さないと、法務省もわからないんですよ。いま、議員に聞いてもわかる人いない。議員がわからないからって、最初からわからない法務省に聞くというのは、これまた無責任な話です。施行以来、議員が解釈深く考えないで、現場に投げて、現場が困っているという状況です。
奥村は以前、律儀にも提案者の国会議員(元検事)に条文解釈を聞きに行って、なんで私に聞くのですか?なんで私が答えるんですか?国会が決めたことですよ。国会に聞いて下さい。って怒られました。(で、国会に聞こうと、両院の法制局に問い合わせても、「議員立法なので、議員に聞いて下さい」と言われました。)わかってないひとに聞くと、怒られます。議員立法なんてそんなものです。で、結局、裁判所が立法者意思なんて離れたところでフリーハンドでまちまち解釈しているわけです。
なお、奥村弁護士によれば「30歳の女性が子供の頃に撮影したヌード写真をブログにアップした場合でも「子供の人権侵害」で処罰されるのか?」という質問に関する正確な回答は以下の通りになるようです。
「一般に福祉犯の保護法益は児童が健やかに成長する権利という一身専属的かつ処分不可能な保護法益であって、児童ポルノの流通によって多かれ少なかれ侵害される。被害児童本人や保護者が承諾しても児童ポルノ罪の成否には関係ない。」と説明すればいいわけで、これくらい奥村でも知ってるので法務省担当者の勉強不足(議員のレベルに合わせて適当に無知な人が対応した感じです。)。被害者の承諾の主張が退けられた裁判例を積めばわかります。
「ドラえもん」も発禁になる可能性がある場合、過剰コンプライアンスによって日本のコンテンツ産業が壊滅するのではないか?
一部の規制推進派団体はともかく、立法者側はそこまでの規制は意図していないようです。
こういった懸念が表明される原因としては、法制定時の1999年に議員立法で作成された法文の出来が悪く、「児童ポルノ」の定義も曖昧なまま現場での運用に任せてしまって法律が一人歩きしてしまった事にあります。
「児童ポルノ法」が制定された1999年には、法制定による過剰コンプライアンスとして「バガボンド」「ベルセルク」「あずみ」といった「文化庁メディア芸術祭受賞作品」の漫画までもが法規制の対象となると解釈されて店頭から消えてしまった「紀伊国屋事件」と呼ばれる騒動が起こり、出版社の編集の方によって「法的根拠がなくても、「お察し」で流通が自己規制を始めたら、その時点で実質的な絶版」という業界の現状を伝えた記事がNiftyに投稿されるなど、法律というものが立法者の意図から離れた解釈をされて一人歩きしている日本の実態を示す実例が投稿されました。
11月1日より児童ポルノ法案が施行されましたが、紀伊国屋書店が18才未満が性行為もしくはそれに準ずる行為が描かれている漫画を店頭からいっせいに外してしまいました。
山本直樹さんや榎本ナリコさんの単行本をはじめ、「バカボンド」や「ベルセルク」「あずみ」までが外れています。「やおいもの」などはもちろん、小説でも挿し絵などで18才未満と思われるキャラクターがそういった行為をしているように見られるものはすべて外してしまったようです。ちなみに写真集は18才未満が被写体となっているものは、水着写真でも店頭に出さないようです。
「バカボンド」が外れたのは、物語の初めの方で、17才の武蔵が性行為に及ぶ場面があったからだそうで、「ベルセルク」は主人公が幼い頃に犯された場面あったのが引っ掛かったようです。他のものも似たり寄ったりの理由です。
南館では、成人コーナー自体がなくなってしまいました。成人コミックといっても、未成年をキャラクターにしていないものも多いと思うのですが、まとめて消えてしまいました。
今回の児童ポルノ法案では、漫画をはじめとするイラスト類は規制の対象外と思っていたので驚きました。
日本中の誰に聞いてもエロ漫画とは思わないような「バカボンド」までが対象となるなら、現在日本で出版されている青年向けコミックはほとんどがアウトでしょう。
規制の対象自体は各店の判断にまかせているようなので、同一基準での規制ではないようです。私が主に見ているのは新宿本店と南館ですので他の店の事情は若干異なるかも知れません。
紀伊国屋が独自の判断で規制を行うこと自体は自由だと思いますが、気になるのはこれが他の書店にも広がる可能性があるのかどうかということです。
実際のところ法的根拠がなくても、「お察し」で流通が自己規制を始めたら、その時点で実質的な絶版です。もしこの動きが全体に広がるようならば、編集上の対処をせざるを得ません。
こういった行動の背景になっているのは、流通側の「見せしめのための摘発も充分に考えられ、それが社の大きなイメージダウンに繋がりかねない危険性があります(紀伊国屋書店)」という意識です。
4.売り手の視点――売らぬ存ぜぬ
http://members.jcom.home.ne.jp/semaki/zipo/zipokin/4.htm
標記の件、既に把握されていることと思います。98年より継続審議されていました「児童ポルノ禁止法」(正式名称;児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護に関する法律)が本年5/18衆議院本会議を通過し成立、本年11/1から施行されることとなりました。
この法律の目的は、児童買春、児童ポルノに係る行為を処罰し、児童に対する性的搾取、虐待から児童を保護し児童の権利を擁護することとなっています。
その内容は、欧米並みの厳しいものとなっており、また表現が曖昧なため解釈が難しい(広く該当してしまう)ことも指摘されています。我々に係る内容を要約すると以下の通りです。
(中略)
つまり、18歳未満の児童の上記の内容の写真、ビデオテープその他の物を販売した場合は、しかるべき処罰がなされ、その刑事罰は個人ばかりか「法人」に対しても適応される。さらに、これは同業界の製造元の出版社はもちろん、出版物の運搬を行なう取次に対しても同様に適応される。
<施行に伴う注意点/対策>
既に同様の法律が施行されている欧米に比べ、今回初めて施行される日本はその内容の社会的認識と意識が、不慣れなため低い状況です。業界の対応も、出版社、取次ともに迅速に、敏感にという状況にはありません。(トーハンは雑誌の部分で注意していくというスタンスはあるようです)
また、
同法律が施行され公安当局がどのように動き出すのか不透明な状況ですが、見せしめのための摘発も充分に考えられ、それが社の大きなイメージダウンに繋がりかねない危険性があります。(店頭での摘発ばかりでなく、性犯罪を起こした犯人の家宅捜索の結果該当商品が押収されその購入経路からの摘発はありえる)何れにしても業界リーディングカンパニーの我社としては、その対応には充分に注意しなければなりません。元々該当しそうな商品を積極的に販売している店舗は無いと思われますし、取次も処罰の対象から当然自主的に注意、規制して行くものと思われますが、「疑わしき物は排除する」を基本方針とし具体的には、下記の点を注意下さい。
このような状況の中、定義が曖昧な「児童ポルノ」と「単純所持禁止」が組み合わさってくると、弊害も杞憂とは言えない状況になってしまいます。
自民党内では定義が曖昧な「児童ポルノ」と「単純所持禁止」が組み合わさった時に起きる問題点に気がついた議員達によって、「児童ポルノ」の定義の厳格化を求める声も大きくなってきているようですので、法文の変更が行われてこの懸念が払拭される可能性もあります。
6割方は修正が実現-いよいよ正念場を迎える児童ポルノ禁止法(2008/06/06)
http://ameblo.jp/gusya-h/entry-10103773052.html
なお、民主党案は憲法問題も絡めて表現規制を前提とした調査は行わず、現行の児童ポルノ法の問題点も研究して、「児童ポルノ」の定義の変更・3号ポルノという概念の削除など、冤罪被害の防止のための各種の施策と合わせて、この種の問題が生じる事は無い内容になっています。
関連項目
最終更新:2009年03月28日 13:26