SF百科図鑑

シオドア・スタージョン『人間以上』ハヤカワ文庫SF

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(読んだ時期)2002年

国際幻想文学賞受賞の『集合知性・超能力テーマ』オムニバス長編の名作。精神的・肉体的・能力的に劣っていたり不具であったりするために、他人に虐げられている社会の落伍者たちが、互いに精神を通わせることにより強力な超能力を発揮するという話である。しかし、このメインアイデアから想像されるような冒険活劇ではなく、落伍者たちのねちっこく暗い心理描写がスタージョンの魔法のように華麗な文体によって行われるため、一種異様な迫力に満ちた幻想世界を体験することができる。読み始めは登場人物のあまりの暗さに辟易するかも知れないが、我慢して読み進むうちに独特のスタージョン世界にはまりこんでしまうことは必定。そして、彼らを統合するメインコンピュータ的な存在である赤ん坊(旧版表紙絵)の登場により、ストーリーは俄然加速度を増す。また本書はオムニバス形式であり、個々の中編が例えば叙述トリックのような構成を取るなど非常に技巧的で斬新な楽しみ方ができるようになっているので、読んでいて飽きがこない。

正直、文学的難易度はやや高めであるので、小説を読み慣れていない方にはあまりお勧めしないが、少し変わった作品を読んでみたいという方にはうってつけの傑作である。(2005.12.11)


2002年


7/1
人間以上」読み始める。しかし、今度こそ「吸血鬼つづれ織り」を読書のメインに据えよう。

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