SF百科図鑑

キングズリイ・エイミス『去勢』(サンリオSF文庫)

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May 04, 2005

キングズリイ・エイミス『去勢』(サンリオSF文庫)

去勢プリングル100冊から並行してこれも。SF評論の『地獄の新地図』で有名なエイミスの改変歴史SF。
どこまでも微妙な作品。いかにも評論家が書いた小説という感じのわざとらしさがある。評論家小説の特徴である、キャラクター描写の下手糞さも免れていない。
ローマカトリック教会が強大権力となって、事実上ヨーロッパを支配しているオルタネートヒストリー。天才少年歌手ヒューバート・アンビルはその美しい歌声を第二次性徴によって喪わないように去勢手術の決定が下る。これを何とかして妨げようとする大人たち。少年の母とお付きの神父は不倫に落ち、この神父は去勢されて殺害される。少年は兄の助けで、少年に好意的なニューイングランド大使館に逃げ込み、ニューイングランドに向う船に乗ろうとするが、皮肉にも睾丸に捻転を発症し摘出手術を受けるハメとなる。結局少年は睾丸を失い、15年後、天才歌手としてローマで歌っている。カトリック教会はトルコに進軍し3000万人の死者を出しながらこれを占領したりしている。
皮肉でいやな結末だし、教会もこれ以上ないぐらい醜怪な存在として描かれている。一種の教会批判の書か? 
辛辣だが、物語としては抑揚に乏しく、いささか退屈で気の晴れない本だった。
テーマ性  ★★★★
奇想性   ★
物語性   ★
一般性   ★
平均    1.75
文体    ★
意外な結末 ★★
感情移入力 ★★
主観評価  ★1/2(17/50点)
<参考>
アイデア  ★★
ストーリー ★
キャラクター★
文体    ★
主張    ★★★★
合計    ★1/2(18/50点)
叙述    三人称・多視点的
結末    バッドエンド
ジャンル  改変歴史・宗教
silvering at 07:02 │Comments(4)TrackBack(7)読書

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この記事へのコメント

1. Posted by slg   May 04, 2005 16:56
まずこの本から読むことに。60ページ。けっこう面白い。ロ-マカトリック教会が絶大な権力を握ったパラレルワールド。世界はカトリックヨーロッパ、北米ニューイングランド、イスラム世界の3つに分かれている。10歳の主人公の少年ヒューバート・アンバーは天才歌手で、作曲の才能もある。教会は彼の才能を見込んで、ある外科手術を施す決定をしている。他方、少年は、ある日、森を散歩していて、友人が女の子と全裸で何かをしているのを目撃する。
2. Posted by slg   May 04, 2005 16:56
ここまでで大体先が読める。この外科手術というのは去勢手術だろう。原題alterationだと意味があいまいだが、この訳題は身も蓋もない。題名でネタが割れてしまってるから。他方で少年は友人のHを目撃して性に目覚め、去勢から逃げながら苦悩する。最後は服従パターンなのか革命パターンなのかは予測がつかないが、多分どちらかだろう。
だが予定調和だとしても、物語の素材たる対立概念設定に欠けるところはない。SF版『車輪の下』って感じか。
3. Posted by slg   May 04, 2005 17:00
訳題「オルタレーション」のままでいいんじゃないの。無理に日本語に直して無粋にするよりは。
4. Posted by slg   May 05, 2005 01:01
214ページ。
今ンとこ可もなく不可もなし。
少年の去勢を阻止しようとする母親と、この母親とデキてしまった神父。少年の父親ははじめ去勢に乗り気だったが、実際に去勢され悲惨な人生を歩んだといって少年の去勢をやめたほうがいいという人物を見て迷いだす。
一方、教会権力は警察も味方につけ、何としても少年の去勢を推し進めようとする。
少年は、去勢が意味するところを知ろうと、友人らにセックスについていろいろと質問をし、どうすべきかを考える。が、今のところは去勢が特にいやではない。
こういった感じの状況です。
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